はじめに
プロジェクトを進める際、個別の分析や調査には着手しているものの、「結局これは何のためにやっているんだっけ?」と迷子になることはないでしょうか。
私自身、目の前のデータを集めることに必死になり、いざ報告の段になって「バラバラの事実はあるけれど、一つの物語になっていない」という壁にぶつかったことが何度もあります。
今回は、分解したイシューを一つの「流れ」として統合する作業、すなわち「ストーリーラインを組み立てる」工程について考えてみたいと思います。
著書の要点を噛み砕く
イシューを分解した後に必要となるのが、それらを意味のある順序で並べ、検証すべき仮説の物語を作ることです。
ストーリーラインの役割
ストーリーラインは、単なる「目次」ではありません。それは検討の全プロセスにおいて重要な役割を果たします。
- 立ち上げ段階: 検討の範囲を明確にし、何を考え、何を考えないかを定めます。
- 分析検討段階: イシューに対する仮説の検証がどこまで進んでいるかを可視化します。
- まとめの段階: 最終的なプレゼン資料や論文をまとめる際の、最大の推進装置となります。
ストーリーラインは一度作ったら終わりではなく、分析の結果、サブイシューが答えを出すたびに書き換え、磨き続けていくものです。
ストーリーラインの2つの型
物語を組み立てる際、代表的な型が2つあります。
- WHYを並べ立てる: 「なぜ案件Aに魅力があるのか」「なぜ手がけるべきなのか」といった問いに対し、並列的に理由を挙げていく形式です。
- 空・雨・傘: 「空(事実:問題は何か)」「雨(解釈:この問題のどこを見極めるべきか)」「傘(解決策:だとするとどうするか)」という論理構成です。
事業コンセプトのストーリー
より具体的な事業検討においては、以下の構造が求められます。
- 問題の構造: 解くべき問題は「狙うべき市場ニーズ」と「事業モデル」の掛け算で決まりますが、現在はどちらも曖昧であることが多いです。
- 狙うべき市場ニーズ: ニーズの広がりや時代のトレンド、自社の強みが生きるセグメントを見極めます。
- 事業モデル: 取り得るモデルの選択肢から、収益の上げやすさや強みの生かしやすさを検討し、成立要件を明確にします。
最終的には「仮説が正しいとすれば」という前提のもと、必要な問題意識の共有から、個別の検討結果、それらを統合した意味合いの整理までを一つの流れにまとめ上げます。

その主張をどう受け取ったか?
「ストーリーラインは脚本・ネームづくりに似ている」という表現は非常に共感できます。
私たちはつい「正しい分析」を積み重ねれば、自然と結論が導き出されると思いがちです。しかし、実際には「おそらくこうなるはずだ」という強い仮説に基づく物語が先にあり、それを検証するために分析が存在する。この物語を作る時点で違和感があればその仮説は成り立たないといのです。
特に印象的だったのは、ストーリーラインを「決め打ちではない」と断じている点です。検証の結果、仮説が崩れればストーリーを書き換える。この「柔軟な修正」を前提として、いわゆる仮説と検証のサイクルをなるべく早く回すことが答えに最も早く到達できるという考え方と感じます。
完璧な証明を積み上げるのではなく、まずは「空・雨・傘」というシンプルな枠組みに思考を乗せてみる。その過程で生じる「本当にこの傘で雨をしのげるのか?」という揺らぎこそが、イシューを深めるための重要なシグナルになるのではないでしょうか。
この章のお話は、具体的に「イシュー」とどう向き合うのか、解決に導くための重要なポイントと感じました。
次回予告
次回は、組み立てたストーリーをより視覚的に具体化する工程、「⑨絵コンテとは何か」について掘り下げていきます。

補足
本シリーズは「イシューからはじめよ」を題材に、書籍の内容を要約・引用しつつ、筆者自身の解釈と実務経験を交えて解説するものです。
記事中で言及している内容は、著作権法第32条(引用)に基づき、公正な慣行に合致し、かつ報道・批評・研究の目的の範囲内で行っています。
書籍
※本章はPRを含みます。

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