PMPは何のために取る資格なのか?──年収や出世では測れない本当の価値

会議と資格取得のテーマ
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はじめに

PMPのメリットについて調べてみると、さまざまな意見や体験談が見つかります。
違和感を覚えた、というよりも、多くの先人たちの知恵が整理されており、参考になる意見が多いという印象を持ちました。

その一方で、資格取得を検討している人の中には、
「資格を取ること=年収アップや出世につながる」
と考えている方も少なくないと思います。

自分の時間とお金を投資する以上、リターンを意識するのは当然ですし、
その考え方自体を否定するつもりはありません。

ただ、私自身の経験を振り返ると、
PMPを取得したことと、給料アップや出世との間に強い相関があったかというと、正直そうではありません。

多くの会社では、弁護士や会計士のような独占資格でない限り、
「資格を持っているから給料を上げる」という判断にはなりにくいのが現実です。
なぜなら、資格取得と会社の利益増加との関係を、明確に説明することが難しいからです。

では、PMPをはじめとする資格は、意味のない投資なのでしょうか。
私の答えは、決してそうではありません。

この記事では、
「年収アップや出世」という分かりやすい成果とは少し異なる視点から、
PMPを取得して本当によかったと感じている点を、私自身の経験を踏まえて整理していきます。

資格取得を迷っている方が、
「自分は何を期待してPMPを取ろうとしているのか」
を考えるきっかけになれば幸いです。

※本記事の前提
PMPの受験条件や試験対策については、すでに多くの詳しい解説があります。
本記事ではそれらを網羅することはしません。

PMPとは何か(簡単に)

PMP(Project Management Professional)は、Project Management Institute(PMI)が認定する、プロジェクトマネジメント分野の国際資格です。
この資格の特徴は、誰でも受験できる資格ではないという点にあります。

細かい条件などはPMI支部のHPを見ていただければと思います。

PMPは「実務経験」を前提とした資格

PMPの受験には、一定期間のプロジェクトマネジメント実務経験が求められます。
単にプロジェクトに参加していた、というだけでは足りず、

  • プロジェクトのリードと指揮が含まれなければいけません
  • どのフェーズに、どの程度関与してきたか

といった経験が前提条件として問われます。

社会人になったばかりだと、プロジェクトのリードや指揮はできないと思いますので、ある程度経験を積んで仕事を任されるようになり、さらに数年経過しないと(中高卒は5年以上、大卒は3年以上の経験)受験資格は無いということになります。

従って、PMPは学生向け資格や、知識確認型の試験とは一線を画していることが分かります。

さらに「事前学習」が必須である理由

PMPでは、実務経験に加えて、事前学習(公式には一定時間のプロジェクトマネジメント教育)の修了が受験要件として定められています。

ここで重要なのは、
この事前学習が「試験対策テクニック」ではなく、考え方を揃えるための学習として位置づけられている点です。

多くの場合、この事前学習では、

  • プロジェクトをどのような構造で捉えるのか
  • 何を管理対象として扱うのか
  • 判断や合意は、どのタイミングで行うのか

といった、PMBOKガイドを中心とした共通の前提を学びます。

つまりPMPは、

  • 実務経験だけでも不十分
  • 知識の暗記だけでも不十分

という、二重のハードルを意図的に設けた資格だと言えます。

PMPの難易度をブルームレベルで見ると

PMPが「難しい」と言われる理由は、単に出題範囲が広いからではありません。
本質的には、求められている思考レベルが高いことにあります。

ここで参考になるのが、学習到達度を整理したブルームのタキソノミー(Bloom’s Taxonomy)です。

一般に、学習のレベルは次のように整理されます。

  1. 記憶(Remember)
  2. 理解(Understand)
  3. 適用(Apply)
  4. 分析(Analyze)
  5. 評価(Evaluate)
  6. 創造(Create)

多くの資格試験は「記憶」や「理解」、高くても「適用」レベルを中心に設計されています。
一方でPMP試験は、「分析」や「評価」レベルを問う構成になっています。

PMP試験で本当に問われていること

PMP試験では、

  • 正しい用語を知っているか
  • 手順を覚えているか

ではなく、

  • その状況をどう捉えるか
  • 問題の本質は何か
  • 複数の選択肢の中で、どれが最も適切か

といった判断が問われます。

これは、
実務経験 × 事前学習で得た共通フレームを前提に、PMBOKの内容に沿って、状況を「分析」し、「評価」できるかどうかを見ている試験です。「オレ流のプロジェクトマネジメントはこれ!」を主張する試験ではありません。

PMBOKを最初に読んだときに「よく分からない」と感じる人が多いのは、知識が足りないというより、この思考レベルにまだ慣れていないためだと私は感じています。

PMPは「資格」よりも「共通フレーム」になる

PMPの学習プロセスを通じて身につくのは、特定のツールやテンプレートではありません。

  • プロジェクトをどう分解して考えるか
  • どこで何を判断すべきか
  • 誰が責任を持つべきか

といった、プロジェクトを扱うための共通フレームです。

実務経験と事前学習の両方を前提にしているからこそ、PMPは「資格を取った」というよりも、
同じ前提でプロジェクトを語れる状態になったと表現するほうがしっくり来ます。(個人の見解です。)

PMPと年収・出世の関係

PMPを取得すると、年収は上がるのか。
出世につながるのか。

これは、PMPを検討している多くの人が、最初に気になる点だと思います。
自分の時間とお金を投資する以上、成果を意識するのは自然なことです。

ただ、私自身の経験から率直に言えば、PMPの取得と、年収アップや出世との間に、明確で再現性のある相関があるとは言いにくいと感じています。

年収や出世は、資格だけでは決まらない

多くの企業では、弁護士や会計士、運転免許のような独占資格でない限り、「資格を持っているから給料を上げる」「資格があるから昇進させる」という判断はあまり行われません。

理由は単純で、資格の取得と、会社の利益増加との関係を明確に説明することが難しいからです。

どれほど難しい資格であっても、

  • それがどのように業績に寄与したのか
  • 組織としてどんな成果につながったのか

を説明できなければ、評価に直接反映させるのは難しいのが現実です。

評価は、別の構造で決まっている

年収や出世を左右する評価は、資格そのものよりも、

  • 上司の評価観
  • 組織の評価制度
  • 会社が重視している価値観や理念

といった、PMPとは別の構造に強く依存します。

そのため、

  • PMPを持っていても評価されないケース
  • PMPを持っていなくても高く評価されるケース

のどちらも、実際には珍しくありません。

ここを切り分けずに考えてしまうと、
「資格を取ったのに報われない」という誤解や失望につながりやすくなります。

それでも、PMPが無意味になるわけではない

ここまで読むと、
「では、PMPは年収や出世の面では意味がないのか」
と感じるかもしれません。

しかし、私の考えは少し違います。

年収や出世という結果は、環境要因の影響が大きく、再現性が低い。一方で、仕事の進め方や判断の質は、自分自身で高めることができる

PMPは、後者に強く作用する資格です。

この点については、次章で紹介する「共通言語としてのPMP」の経験が、最も分かりやすい例になると思います。

PMPを取得してよかったこと ― 大規模・協働プロジェクトで効いた「共通言語」

私がPMPを取得して、本当によかったと感じている場面があります。
それは、パートナー企業と協働し、エンドユーザーに納品し、その後の保守・運用までを見据えた大規模プロジェクトの企画・開始段階です。

こうしたプロジェクトでは、関わる人の数も立場も一気に増えます。

  • 両社のエグゼクティブ
  • 事業部門の責任者
  • 両社のプロジェクトマネージャ
  • 業務部門・技術部門の担当者

会社と会社が協働する以上、プロジェクトマネージャが事実上の窓口になることも多く、役割は非常に多岐にわたります。

プロジェクト開始前に発生する「見えにくい仕事」

プロジェクトが正式に始まる前には、両社合同のキックオフミーティングを開催するのが一般的です。

そこでは、

  • プロジェクトの目的・ゴール
  • カウンターパートナーの紹介
  • 両社の体制
  • 会議体・コミュニケーションの進め方
  • 想定されるリスクの共有

といった内容を、関係者全体で確認します。

この状態まで持ってくるには、実は相当な調整が必要です。
社内調整、先方との日程調整、資料準備など、事務的で地味な仕事も少なくありません。

PMPリテラシーがある相手との決定的な違い

ここで、PMP(あるいはPMBOK)のリテラシーを持つ相手がいるかどうかで、状況は大きく変わります。

先方にPMP資格保有者がいる場合、

  • なぜキックオフが必要なのか
  • なぜ体制や役割を最初に明確にするのか
  • なぜ会議体やコミュニケーションルールを決めるのか

といった点について、説明をしなくても理解が共有されていることがほとんどです。

つまり、プロジェクトの進め方について、
最初から共通認識がそろった状態で話を始めることができます。

私はこの状態を、
「同じ言葉が通じる」というよりも、
同じ前提・同じフレームで考えられると感じています。

共通言語がない場合に起きること

一方で、プロジェクトマネジメントのリテラシーが十分でない顧客やパートナーの場合、状況は大きく異なります。

本来であれば先方で行うべき、

  • 社内の部門間調整
  • 体制整理
  • 意思決定ルートの明確化

といった作業まで、こちらが踏み込んで支援せざるを得ない場面が出てきます。

発注者と受注者という立場の違いがある以上、
「それはそちらで対応してください」と簡単には言えないケースも少なくありません。

「忙しいから」「他社はやってくれるから」といった理由で、
プロジェクトマネージャが調整役を背負い込む構図は、決して珍しくないと思います。

どちらがプロジェクトの成功確率を高めるのか

視野を広げて考えると、
どちらのやり方が、両社にとってプロジェクトの成功確率を高めるのかは明らかです。

  • 最初に前提や役割をそろえる
  • 判断や合意の場を明確にする
  • リスクを個人ではなく構造として扱う

こうした進め方は、調整時間や手戻りを減らし、
結果としてプロジェクト全体の負荷を下げます。

これは、プロジェクトマネジメントの重要性がまだ十分に浸透していなかった時代の話でもありますが、
現在でも、「協働する」という理念が弱い組織同士では、同じ問題が繰り返されると感じています。

PMPが「共通言語」として機能した瞬間

PMPやPMBOKを学んでよかったと感じるのは、
こうした場面で、プロジェクトの進め方そのものを前提として共有できたことです。

  • なぜこの段取りが必要なのか
  • なぜ今それを決めるのか

を一つひとつ説得するのではなく、同じフレームの上で議論ができる。

この差は、想像以上に大きいものでした。

私にとってPMPは、
仕事を楽にする資格というよりも、本来やるべき仕事に集中するための「共通言語」を持てたことが、何よりの価値だったと感じています。

理念と倫理を共有できるという価値

現在では、日本の大企業にも多くのPMP資格保有者がいます。名刺にPMPと記載されている方も珍しくありません。

そうした人々は、PMP資格者が持つ知識や業務フレームだけでなく、PMIが規定する「倫理」についても理解したうえで業務にあたっています。

  • 仕事の押し付け合いになっていないか
  • 信頼を築ける土台が互いにあるか

こうした視点や理念を共有できることで、より質の高い協働が可能になると感じています。

私個人としては、プロジェクトに関わる多くの人が、このプロジェクトマネジメント、PMP資格の理念や倫理を理解し、共有しながら仕事を進めていくことが、プロジェクトの成功だけでなく、組織や企業の持続的な発展につながるものだと考えています。

PMPは何のために取る資格なのか

ここまで読んでいただくと、PMPは「年収を上げるための資格」でもなければ、
「出世を保証する資格」でもないことは、すでにお分かりいただけたと思います。

では、PMPは何のために取る資格なのでしょうか。

成果ではなく「仕事の質」を高めるための資格

私自身の経験から言えば、PMPは成果そのものを直接もたらす資格ではありません。

一方で、

  • 判断の仕方
  • 物事の切り分け方
  • 合意の取り方
  • リスクの捉え方

といった、仕事の進め方そのものの質を確実に引き上げてくれました。

これらは短期的な評価には表れにくいものの、長い目で見れば、プロジェクトの成功確率や、周囲からの信頼に大きく影響します。

自分の業務を、構造として見直すきっかけになる

PMPの学習を通じて強く感じたのは、それまで感覚的に行っていたプロジェクトマネジメントを、
構造・体系として捉え直す機会を得られたという点です。

  • なぜこの判断をしているのか
  • 本来、誰が決めるべきことなのか
  • どこで合意を取っておくべきだったのか

こうした問いを、自分自身に投げかけるようになりました。

これは、今の業界や業務に当てはめて改善を考えるうえでも役立ちましたし、同時に、他の業界ではどのようにプロジェクトが進んでいるのかを想像する視野も広げてくれました。

再現性があるのは「行動変容」

年収や出世は、
会社や上司、タイミングといった外部要因に大きく左右されます。
その意味で、再現性は高くありません。

一方で、

  • どう判断するか
  • どう説明するか
  • どう合意を取るか

といった行動変容は、自分自身で再現することができます。

PMPは、この「再現可能な部分」に働きかける資格だと、私は考えています。

そして、こうした行動変容の積み重ねが、プロジェクトの成功率向上やリスク低減につながれば、
結果として、組織や周囲からの評価も徐々に変わっていくはずです。

それは、資格を取った「肩書き」ではなく、学習し、考え、実務で結果を出してきた人だからこそ到達できるポイントだと思います。

何もしなかった人と比べれば、そこに大きな差が生まれるのは疑う余地がありません。

PMPは「正解を教えてくれる資格」ではない

もう一つ強調しておきたいのは、
PMPは正解を教えてくれる資格ではないという点です。

PMBOKを学んでも、
現実のプロジェクトで迷いがなくなるわけではありません。

むしろ、

  • どこで判断すべきか
  • どの観点で考えるべきか

という「問い」を与えてくれる資格だと感じています。

その問いを持ち続けられること自体が、
プロジェクトマネジメントという仕事においては、大きな価値になります。

どんな人にPMPを勧めたいか

以上を踏まえると、
PMPは次のような人に向いている資格だと思います。

  • プロジェクトを本気で良くしたいと考えている人
  • 将来、複数の組織や立場をまたぐ仕事に関わりたい人
  • 自分の仕事の質を、構造的に高めたい人

一方で、
短期的な年収アップや肩書きを主目的にしている場合は、
期待とのギャップを感じるかもしれません。

まとめ ー PMPを通じて見えてきたこと

― 資格の話を、ここで終わらせないために

ここまで、PMPという資格について、

  • 年収や出世との距離感
  • 共通フレームとしての役割
  • 実務の中で実感した価値

といった観点から整理してきました。

改めて振り返ると、
PMPは「取った瞬間に何かが変わる資格」ではありません。
しかし、取ったあとに、じわじわと効いてくる資格であることは、私自身の経験からはっきりと言えます。

PMPがもたらした一番大きな変化

私にとって、PMPを学んで最も大きかった変化は、プロジェクトを「感覚」ではなく、構造として捉える視点を持てたことでした。

  • なぜこの調整が必要なのか
  • どこで判断が滞っているのか
  • 問題は人なのか、構造なのか

こうした問いを、立ち止まって考えられるようになったこと自体が、仕事の質を大きく変えたと感じています。

これは、資格そのものというよりも、資格取得の過程で身についた思考の癖だと思います。

経験談は、まだ書き切れていない

本記事では、大規模・協働プロジェクトにおける一例を紹介しましたが、PMPの考え方が役に立った場面は、正直これだけではありません。

  • うまくいかなかったプロジェクトを振り返ったとき
  • 判断を誤った理由を整理するとき
  • 他社・他業界の進め方を見たとき

後から振り返ると、
「これはPMBOKで言えばどのフェーズの話だったのか」
「どこで合意を取るべきだったのか」
と、整理できる場面が数多くありました。

こうした経験談については、今後もテーマごとに書いていきたいと考えています。

PMPをどう位置づけるかは、人それぞれ

PMPは、誰にとっても必要な資格ではありません。
また、すべての人に同じ価値をもたらすものでもないと思います。

ただし、

  • 複数の組織や立場が関わる仕事をしている
  • プロジェクトという形で成果を出す必要がある
  • 自分の仕事を、もう一段構造的に捉えたい

こうした課題を感じている人にとっては、PMPは有効な思考の土台になり得る資格だと感じています。

最後に

資格を取るかどうかを考えるとき、「何が得られるか」だけでなく、
「どんな仕事の仕方を身につけたいのか」という視点で考えてみることは、とても大切だと思います。

PMPは、答えを与えてくれる資格ではありません。しかし、問いを持ち続けるためのフレームは与えてくれます。

今後も、プロジェクトの現場で感じたこと、うまくいったこと、うまくいかなかったことを振り返りながら、PMPやPMBOKの考え方がどう役に立ったのかを、少しずつ書いていく予定です。

本記事が、PMPを取るかどうかを考えている方にとって、そして、すでにプロジェクトに悩みながら向き合っている方にとって、一つの視点や問いを持ち帰るきっかけになれば幸いです。

関連リンク

PMI日本支部

PMI米国本部

参考文献

PMBOK(R)第8版

PMBO(R)第7版

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