はじめに
チーム内で「誰が責任を持つのか」「誰に報告すべきか」が曖昧なまま進んでいませんか?
RACIチャートは、そんな役割の混乱を整理する最もシンプルで強力なツールです。
RACIチャートとは?
RACIは、チームやプロジェクトにおける「役割と責任の関係」を明確化するマトリクスです。
各タスクや成果物に対して、メンバーが担う役割を4つに分類します。
| 役割 | 意味 | 主な責任 |
|---|---|---|
| R(Responsible) | 実行責任者 | 実際に手を動かす人 |
| A(Accountable) | 説明責任者 | 決定権を持ち、最終的な責任を負う人 |
| C(Consulted) | 相談相手 | 専門知識や助言を提供する人 |
| I(Informed) | 情報共有対象 | 進捗・結果を知っておくべき人 |
RACIを使えば、
「誰が何をすべきか」「誰が決めるのか」「誰に報告すべきか」が一目で分かります。
RACIチャートの作成手順【3ステップ】
STEP 1:タスクを洗い出す
- プロジェクトや業務の主要タスクを一覧化。
- 粒度を揃えることが重要(例:「企画書作成」「レビュー」「承認」など、完了が明確な単位)。
STEP 2:各メンバーの役割を記入
- タスクごとにR/A/C/Iを割り当てる。
- Accountable(A)は必ず1人に限定。
→ 複数いると責任の所在が曖昧になり、意思決定が止まります。
STEP 3:全員で共有・合意
- 作成したRACIを全員で確認し、認識を統一。
- 会議で「このRACIで進めて良いか?」を確認して合意形成を行いましょう。
RACIがうまく機能しない3つの原因と対策
| よくある失敗 | 問題の本質 | 改善策 |
|---|---|---|
| A(責任者)が複数人いる | 判断・承認が遅れる/対立が起きる | Aは必ず1人にするルールを徹底 |
| タスク粒度がバラバラ | 一部だけ詳細、他は抽象的になる | すべて「完了基準」で揃える |
| 共有されていない | 一部メンバーだけが理解 | 初回会議で全員確認&可視化ツールで共有(ExcelやMiro) |
RACIを導入する3つのメリット
- 報・連・相が自然に発生する
誰に報告すべきか明確なので、指示待ちが減る。 - 意思決定が速くなる
A(Accountable)が明確になり、判断がスムーズに。 - 心理的安全性が高まる
役割の曖昧さが減り、責任範囲が明確になる。
RACIチャートのテンプレート例
以下は、実務でよく使う基本フォーマットの例です。
あなたのチーム構成に合わせて「横軸=タスク」「縦軸=メンバー」で設計しましょう。

まとめ:責任を明確にすれば、チームは動き出す
RACIチャートは単なる管理ツールではなく、
「人と人の境界を透明にするマネジメントの言語」です。
責任を明確にすることは、責任を押しつけることではありません。
「誰がどの判断を担うのか」を全員で理解し合うことで、
チームが自律的に動くようになります。
チームの生産性は、スキルと役割の明確さで決まります。
残念な失敗例:RACIチャートを知らないマネージメント
どんなに綿密に作られたRACIチャートも一瞬で崩壊させてしまうことがあります。
それは、マネージメントの認識不足です。
上位層がRACIを無視した指示で命令、指示をし始めると、RACIチャートよりマネージメントの方を優先してしまい、指揮命令系統が崩壊してしまいます。
RACIの作成者、関連するプロジェクトマネージャーはRACIチャートの見方、使い方も含めて上位のマネージメントとコミュニケーションをすることが重要です。
🔗 関連リンク(note記事:「報・連・相」できない部下をさり気なく変える方法 ~RACIチャートでチームの役割分担を明確にする~)
この考え方の背景にある「ドラッカーの責任論」については、
note記事:ドラッカーのマネジメントにおける仕事の設計ミスが組織を壊す〜やってはいけない設計〜 をご覧ください。
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