PMP試験だけでなく、現場マネジメントに生きる普遍の原則とは?
1. なぜ今、「原則」に注目すべきなのか?
第7版PMBOKは、プロジェクトマネジメントを「手順」から「原則」へと進化させました。
背景には、次のような時代の変化があります。
- 変化のスピードが速く、計画通りに進まないプロジェクトが増えた
 - リモート・分散型チームなど、多様な働き方が一般化した
 - 成功を「納期・コスト・品質」だけでは測れなくなった
 
つまり、プロジェクトマネージャーに求められるのは、状況を読み取り、原則に基づいて判断できる力です。
2. PMBOK第7版「12の原則」とは?

| 番号 | 原則 | 概要 | 
|---|---|---|
| 1 | Stewardship(誠実さと責任) | 勤勉で、敬意を持ち、思いやりのある管理人になりましょう。倫理・誠実さをもって資源と成果を守る。信頼される行動が成功の土台となる。 | 
| 2 | Team(チーム) | 協力的なプロジェクトチーム環境を構築する。チームメンバーを尊重し、協働と心理的安全性を重視する。信頼が成果を生む。 | 
| 3 | Stakeholders(ステークホルダー) | ステークホルダーとの効果的な関わり。利害関係者と積極的に関わり、期待と価値を共創する姿勢を持つ。 | 
| 4 | Value(価値) | 価値に着目する。成果物(Deliverable)よりも、ステークホルダーにとっての価値を優先する。 | 
| 5 | Systems Thinking(システム思考) | システム相互作用を認識し、評価し、対応する。プロジェクトを全体システムの一部として捉え、相互作用を理解して最適化する。 | 
| 6 | Leadership(リーダーシップ) | リーダーシップ行動を示す。権限ではなく影響力で導く。状況に応じてリーダーシップの型を変える柔軟性が求められる。 | 
| 7 | Tailoring(状況・環境適応) | 状況に応じて調整。プロジェクトの特性や文化に合わせて手法・ツールを最適化する。標準を鵜呑みにしない。 | 
| 8 | Quality(品質) | プロセスと成果物に品質を組み込む。品質は後工程で検査するものではなく、プロセス全体で内在化していく文化である。 | 
| 9 | Complexity(複雑性) | 複雑性を乗り越える。複雑性や不確実性を前提として受け入れ、単純化よりも理解と柔軟な対応を重視する。 | 
| 10 | Risk(リスク) | リスク対応の最適化。リスクを回避ではなく「学びと機会」として扱い、積極的にマネジメントする。 | 
| 11 | Adaptability & Resilience(適応性と回復力) | 適応力と回復力を受け入れる。変化に機敏に柔軟に対応し、組織・チームとして立て直す力を持つ。 | 
| 12 | Change Management(変更マネジメント) | 想定される未来の状態を実現するための変革を可能にする。変更は抵抗するものではなく導くもの。人・組織・価値の変化を意図的に設計する。 | 
3. 原則を「現場」でどう活かすか?
PMP試験のために暗記するのではなく、「原則=判断基準」として活用することが大切です。
例えば:
- チームの不満が出たときは、「信頼関係の原則(原則2)」を点検する
 - 仕様変更が相次ぐなら、「価値の原則(原則4)」と「変化の原則(原則12)」を見直す
 - 社内政治や部門対立があるなら、「システム思考(原則5)」を用いて関係性を俯瞰する
 
このように、12の原則はプロジェクトマネージャーの「羅針盤」となります。
4. PMBOK第7版が伝えたいメッセージ
PMBOK第7版の本質は、「唯一の正解を探す時代は終わった」ということです。
プロジェクトに完璧なテンプレートは存在せず、原則に基づいて状況に応じて行動する力こそが成功の鍵です。
原則はプロセスを超える。
プロジェクトマネジメントは“知識”から“判断”の時代へ。
5. まとめ:12の原則を「行動指針」として
PMBOKの原則は、資格勉強を超え、マネジメントの哲学とも言えます。
特に次の3つを意識すると、日々の判断に軸が生まれます。
- 価値を中心に考える(Value)
 - 人と信頼を重んじる(Team, Leadership)
 - 変化を恐れず適応する(Tailoring, Resilience, Change)
 
第6版までの「49のプロセス」が「正しいやり方」を示したのに対し、
第7版の「12の原則」は「正しい考え方」を示します。
第6版までで受験した人は、変化をキャッチアップするのが大変だと思います。第7版から受験する方は過去問題が少ないなど受験対策が大変だと思います。
現代のプロジェクトでは、正解が決まっていることの方が少ない。
だからこそ、状況に応じて判断する軸(Principle)が必要になるのです。
「プロジェクトを管理する」から「価値を共に創る」へ。
「正解を探す」から「原則を基に考える」へ。
しかしながら12の原則は、変化の激しい時代におけるプロジェクトマネジメントにおいて、より現実的な指針を示す有効な考え方と思います。
参考資料
- PMI『PMBOK® Guide – Seventh Edition』(2021)
 - note記事:「PMBOK第7版で導入された「12の原則」とは」
 
第7版では「成果志向」から「価値志向」へ。
現場マネージャーに必携の1冊です。
 
 

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